入院騒動の記録(7):やる気と気持ちの転換

さすがに入院を医者から宣告されたときは、愕然としたものだった。入院などしている場合ではないと、しばしいろいろな思いをめぐらせた。

入院当日は必要な仕事の資料をメモ書きし、翌日には資料一式を病院へ届けてもらった。これらをめくってみても頭の中が真っ白になっているものだから、さっぱり進まない。なんとかしようにも、気力が湧いてこないのだった。つまり、やる気が起きてこない。

そこで、ここは勇気ある撤退ということで療養に専念することに気持ちを切り替えた。結果的に良かったのか悪かったのかはわからないが、同じ病状の他の患者と比較してみる限り、治療という観点からは正しい選択だったのではないかと思う。

もちろん病状の種類によってその選択は異なるだろうが、不測の事態に直面したときに己の置かれた立場を理解できれば、次の適切な行動がとれる。それにはいわゆる自分も、また周囲の人も納得できる大義名分が必要だ。入院という大義名分は、何にも増して効力を持っていたのだった。

入院騒動の記録(6):味覚がリセット?

入院2日間は点滴だけで、完全な絶飲食だった。3日目に入り、ようやく水あるいはお茶、スポーツ飲料などの水分補給のみ許可されたが、相変わらず絶食状態は解除されなかった。4日目になって、ようやくコーヒーやジュースなど飲料に関しては制限がなくなった。

なにが飲みたかったかといえば、それはコーヒー。しかし、いわゆるレギュラーコーヒーは飲める場所もないから、飲めるコーヒーといえば自動販売機にある缶コーヒーしかなかったのだった。

こうしたものを飲めるようになると、とりあえず多少は糖分も欲しい。でも、缶コーヒーで糖分の入ったものは、ただ甘いだけというのがこれまでの認識である。他に選択肢はないこともあって、やむなく微糖タイプの缶コーヒーを購入した。

飲んでみて驚いたことがある。微糖タイプとはいえ、これまで甘いだけと思っていた缶コーヒーだが、なんとコーヒー特有の苦味を感じることができたのだった。苦味もきちんとある・・・、缶コーヒーを少しばかり見直した。

2〜3日間の絶飲食と水分補給のみの入院生活の結果、味覚が多少なりとも敏感になったのだろうか。味覚に鈍感な人が味覚を鍛えるには、入院してみるのがいいかもしれない。

入院騒動の記録(5):患者の身だしなみ

入院も長期化してくると、身だしなみが崩れてきはしないだろうか。なにしろ入院患者のほとんどはパジャマ姿だから、ついつい身だしなみから手を抜いてしまう人が多いようだ。

観察してみると、入院患者の7割ぐらいはパジャマ姿で、残り3割が若い人を中心にジャージを着用。ちなみに“しのご”はスウェットを着ていたが、スウェット姿は“しのご”ひとりだった。

一番驚いたのは、意外にも高齢者を除く男性患者に身だしなみを整えている人が多かったことだ。ひげそりはもちろんだが、髪型も寝ぐせが付いている人は少ないし、中にはドライヤーで髪型を整えている人もいた。

一方、なぜか女性患者は身だしなみという点で崩れている人が多い。顔色の判断ができないという理由で化粧はできないようだが、それにしても髪はボサボサでブラッシングどころかブラシ、あるいはくしすら通していないと見られた。

パーマをかけた髪にメッシュを入れている人も、普段ならていねいに整えているのだろうが、とにかくもうボサボサ。こうなるとファッションであったはずのメッシュも、ただ見栄えを悪くすることに一役買っている。

入院が長期化してくると、日常生活の緊張感がだんだんなくなるのだろう。そして、それが顕著に現れるのは身だしなみかもしれない。

入院騒動の記録(4):テレビの視聴時間

普段からテレビはほとんど見ない。とはいえBGV代わりにテレビはついているから、チラチラとは見てはいるが、腰を据えて見るのは映画、ニュース番組(ニュースではなくニュースショーのたぐい)ぐらいなものだ。

だから、テレビはほとんど見ていないといっても間違いないと思っていたし、よくある1日何時間テレビを見ているかといった視聴調査で、1〜2時間以上テレビを見ている人は基本的にヒマ人だとも思っていた。

入院期間中は、どれだけテレビを見ていたのか。病院の朝食は7時。つまりテレビを見ながら7時から1時間ほど、いわゆるニュース番組を見ていた。ほとんどが新聞記事を紹介し、コメンテーターと称する者たちが、言いたいことをいうだけ。こんなことをやっているから、テレビ局の取材力が低下するというのはともかく、1時間は確実に見ていたわけだ。

昼間の間は検診や自分での治療時間をのぞき、ひたすら療養に努める。18時には、もう夕食の時間となる。特にテレビは見ない。夜間はどうしていたのかといえば、テレビを見ていた。20〜21時からの映画、もしくはいわゆるニュースショー。だいたい2〜3時間ぐらいだった。

すべてのテレビ視聴時間を合計すると、なんと4時間近くもテレビを見ていた計算になる。病院のテレビは1,000円で20時間のテレビ視聴が可能となるカードシステムを導入している。10日間の入院で40時間分のカードをほぼ使い切ったから、計算にも間違いはない。

思っていた以上にテレビは見ていることに驚いたものだ。唯一、例外的に昼間テレビを見たのはWBCの決勝である対キューバ戦だった。

入院騒動の記録(3):入院の目的

治療、療養に専念する、これが入院の目的であろう。つまり、入院した本人を取り巻く周囲のノイズを遮断するわけだ。この場合、仕事すらノイズとなるかもしれない。

なぜなら、主治医は「入院していただきたい、いま直ぐ」という言葉の後にこう言ったものだ。「仕事をして欲しくない」。この言葉の枕には「治療に専念するため」、重症患者であれば「命を守るため」といった意味が込められていると誰しもが思うだろう。

だから“しのご”は、療養に専念することにした。一刻も早く完治して、復帰するからには当然の行為であるはずだ。したがって、検診や治療を受けなければならない場合を除いては、極力ベットに体を横たえて目をつぶっていたものだ。

今回は患部がのどということもあって、1日3回、あらかじめ決められた時間に治療の一環で「のど吸入」を行う。これは特にむずかしいものではなく、ネブライザーという機械を使って自分で行う。のどの湿布みたいなもんだろうか。当然だと思うが、早く完治させたいと思うからこそ、きちんとのど吸入を行っていた。

今回一番驚いたのは、同じ症状で入院している患者らが、これを行わないことだった。看護士から呼び出し、あるいは定期的な検診時に指示されない限り、のど吸入をやらない。自分で自分自身の病を治そうという気持ちはないのだろうか? “しのご”には考えられない行動だった。

もちろん、受動的に治療を受けていても治るのだろう。しかし、能動的に自主的に治療を受けなければ、治療期間は長期に渡ることは確実だ。実際のところ、どのような差があったのかはわからない。同室に同じ症状で、ほぼ同時期に入院した患者がいたのだが、症状にも軽重はあるだろうから一概には言えないものの、その受動的患者は“しのご”が退院した時もまだ点滴のお世話になっていた。

入院騒動の記録(2):入院の告知

何らか非日常的なこと、ちまり冠婚葬祭に関することや、なにかの賞の受賞などなど、とにかく変わったことがあれば他人へ言いたくなるのが人間の心理といえるだろうか。うわさ話があっという間に広まってしまうのも、こうした心理行動に基づくものかもしれない。

だから、今回の入院についてもどうしたものか考えた。あれこれと言い広めるのは、おろかな行動。まず連絡したのは仕事関係で、数日中には会わねばならない方々。そして友人・知人は1名だけ。最低でも1週間の入院は避けられない状況だったから、これで十分だった。

それでも入院期間中には、さまざまな連絡が来ていたし、こういうときに限って遠方から知人が来たりするも。だまっておくつもりだったが、やむなく入院したことを告げることとなった。

退院後、驚いたのは、けっこうな数の方々が入院したことを知っていたのだった。この手の話は噂話と同じでパッと広まるらしい。噂話にはつきものの尾ひれはなかったようだが、こんな話を広めて面白いのだろうか?

入院騒動の記録(1):患者同士のコミュニケーション

急性喉頭炎とやらで、診察と同時に入院を宣告され、10日間もの入院生活を送ったのだった。この入院によって仕事も何もかもが停止状態となったわけで、無事退院できたものの、以前のペースを回復させるには時間がかかりそうだ。

入院期間中、周りを眺めながら入院生活というものをについて思いついたことをメモしておいた。しばらくは、その記録を書き連ねることにする。

病室は整形外科、耳鼻科の患者が入る5名1室。ほとんど他の患者と話はしなかった。診察の待ち時間には、高齢の患者から話しかけられる。「どこが悪いのか?」「入院して(期間は)どのくらいか?」。きちんと答えはしたけど、こちらから話しかけることはしなかった。

見知らぬ人間同士が出会って、ここでは病に関する共通の話題があるわけだ。しかし、それを話し合ったからといって早めに治るわけではないし、なぐさめあって解決する問題でもない。自分自身のストレス解消には役立つのかもしれないが・・・。

入院患者の妄想だろうか。他の患者の言動を見ていて、唐突に回復へ向けた適度の緊張感を失ってはならないことに思い至ったのだった。だから、その緊張感を保ち続ける一手段として、朝夕の挨拶や必要最小限の会話を除いて、患者同士なぐさめ合うような話には加わらないことにした。

もちろん、こんな方法が良いのか悪いのかはわからない。また、療養に貢献したのかもわからない。やはり入院患者の妄想だったか・・・。

Profile

しのご
しのご
業務日誌ですから、業務のある日は毎日更新する(?)はずです。

New Entries

Comment

Categories

Archives(295)

Link

Search

CONTACT