入峰修行へ向けて

入峰修行。それは修験道における山伏の山岳修行のひとつである。例えば羽黒山の山伏修行では「このところは深々秘密の行場なれば、ここで見たこと聞いたこと、例え親子兄弟、女房朋友たりとも、一切他言無用なり」と誓わされるのだという。羽黒山伏ばかりではなく、たぶん他の山伏修行でも同様なのだと思う。そのような疑問を抱えながらも、いまこうして「霊山入峰修行」の記録を残しておきたい。

 

修験道は神仏習合の宗教だといわれている。日本古来から続く神や仏、自然の精霊たちも交えた世界、わかりやすくいうならば宮崎アニメ「もののけ姫」に登場する文化的背景とでもいおうか。現代では忘れ去られた世界ではあるけれど、たぶんにして日本人の精神的DNAとして残っている。

 

多くの人は他人には語れぬさまざまな悩みや欲望を抱えている。その解消や達成を望んでいるのはボクも同じであり、こんな思いを抱いているときに読んだ本が「熊野、修験の道を往く-大峯奥駈 完全踏破」だった。抱えている思いなんかもうどうでもいい、大峯奥駈へ行きたい。その前に、まず山岳修行というものを体験してみたい。その思いは日増しに強くなっていくのだった。

 

山伏修行体験

インターネットで検索してみると、さまざまな修験道寺院で一般向けの山伏修行を実施してることがわかった。1日体験から数日間を要するものまであったが、まずは(1)お堂などに篭るのではなく、山岳修行がメインであること、(2)初めてなので1日だけにしておきたい、(3)近場がいい。実際にやるとなると日和見主義に陥る。

 

こうして参加を決めたのが、宮城県丸森町にある本山修験宗 聖護院門跡の末寺である駒場山 愛敬院が実施している「霊山峰入り修行」だ。霊山は福島県伊達市に位置する修行の山だそうで、この山中において山伏修行をすることになる。

 

2007年5月27日早朝、ボクは集合場所の愛敬院に向かった。

 

そこは修験寺院

愛敬院の山門前には鳥居が立つ。寺院に神社様式の鳥居があるとは、いかにも不思議な光景だ。これが神仏習合の修験道寺院の特色らしい。

 
愛敬院山門前の鳥居
 

鳥居を進むと、寺院様式の山門が現れる。これを見て、やっとここまで来たという感慨にふけるのだった。

 
愛敬院山門を望む
 

愛敬院本堂前では、先に到着していた修行者がお参りしていた。本来ならボクもお参りしなければならないのだろうが、正直なところちょっと戸惑いを感じて集合時間まで静かに待っていた。

 
愛敬院本堂でお参りする修行者
 

一路、霊山へ

参加者が続々と本堂前に集まる。正装の山伏を実際に見るのは初めてだから、ちょっとドキドキもので、その姿がまぶしい。ボクらには宝冠、解説書(勤行次第)、数珠、袈裟、名札が渡され、宝冠の付け方などのレクチャーを受ける。

 

ボクを含む一般参加者は20数名、山伏の方々数名、合計31名という布陣で峰入り修行へ向かうことになる。まずは本堂前で道中安全、満行達成などの祈願を兼ねて勤行*1。勤行に併せて振り鳴らされる錫杖の音色が心地よく、これまた初めて聞く法螺貝の音が高揚感を募らせる。

 

こうしてボクらは愛敬院からマイクロバスで1時間ほどの場所にある霊山へ向かったのだった。

 

 

コメント

何かあれば、コメントをどうぞ。

 
  • 実は20年以上も昔、とある真言宗系の寺院(現在はネット上で見る限り評判が悪そうなので名前は伏す)で修行の真似事を2年半ほどしたことがある。本山修験宗は天台宗系とのことで、般若心経や真言の読みが一部異なっていて、これにも戸惑ったのだった。 -- しのご 2007-07-12 (木) 13:09:33



*1 次第は三条錫杖、般若心経、諸真言(大日如来・不動明王・高祖宝号)、本覚讃

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Last-modified: 2007-07-13 (金) 13:11:18 (6125d)